【第14回レッスン生 演奏会を振り返って】
生きる意味なんて考えても考えなくてもよいと思うけれど、私にとって生きていることは挑戦することだと思っています。
700席のホールで一人で歌うなど、普通ならする必要がない挑戦かもしれませんが、それを敢えて選んだ31人。
1年に何度も本番を経験できる生徒もいれば、この演奏会しかチャンスがない生徒もいます。その生徒にとっては、リベンジしようにも一年後。一人ひとりの本気の挑戦が会場にいるお客様にもヒシヒシと伝わる演奏会ではないかしらと思っています。その真剣さが生徒たちを支えてくれるピアニストの先生方にも伝わって、プロの方々が真剣に寄り添って弾いてくれるなんて幸せなこと。
たかが発表会。されど発表会。今年も沢山のドラマがあって、一人一人が眩しいほど輝いていました。
そんなわが教室の発表会を美しい言葉で綴ってくださった 橋本大輔さんの投稿を紹介したいと思います。参加されたことのない方、来年は(まだ日が確定しておりませんが)ぜひ覗いてみてください。体験者の声をコメント欄に追加していきます。
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2022年10月23日(日)
川口聖加声楽レッスン生 第14回演奏会
いつからかは忘れてしまったが最初から最後まで聴くようになって
もうどのくらい経つのだろうか。。。
今年もきっちり最初から最後まで見届けてきた。
声楽を初めてまだ数か月の人から、十数年以上はゆうに経っているベテランまで31名の歌い手が
様々な思いを胸に抱いて全身で歌う4時間30分であった。
今日は和服で聴きに行ったので自ずと椅子に座る姿勢は良いものになり、背筋をピンと伸ばして皆さんの想いを真正面から受け止めてきた。
声は本当に正直だと思う。
歌う人の気持ちがダイレクトに伝わってくる。
毎回毎回、絶対にグッとくるシーンがあるのだが、
今回はしょっぱなから胸に熱いものがこみ上げた。
ご縁があって川口先生に5ヵ月ほど前に師事された生徒さんの歌うアメイジング・グレイス。。
その歌唱に寄り添うようにステージで一緒に歌われた川口先生。
愛のこもった歌唱に胸が熱くなった。
そしてtuttiYでもご一緒させて頂いているバスの方の歌う「カロ・ミオ・ベン」
とてもシンプルな曲で声楽を始めたばかりの時に歌われることの多い曲で、ボクもクラシックの歌唱はこの曲から始まった。
シンプルであるがゆえに実は非常に奥が深く難しい曲でもあるけど、
赤松さんの歌唱は誠実なお人柄がにじみ出てくるようなものでありそれでいて力強く、そのうえで切々とした思いが伝わってきて聴いていて思わず落涙。。
本当に素晴らしい歌唱なのであった。
ボクは介護職としての資格をいくつか持っていて
その中に「同行援護」というものがある。
視覚障害のある方を支援するためのものである。
川口先生のレッスン生には視覚障害のある方も数名いらして、毎年演奏会にも出演していらっしゃる。
その同行援護の有資格者が、歌手がステージに立つのを支援しており、その舞台を見る度に自分の介護職としての本分を思い出すのである。
皆さん毎年全身全霊の歌唱を聴かせて下さり、直接言葉を交わしたことはないが毎年歌声を聴くことをできるのを楽しみにしている。
今日そのうちのお一人が歌われた「赤とんぼ」
素晴らしい歌唱であった。
目が普通に見える者には、夕焼けも、赤とんぼも、竿の先も当たり前のように思い起こせる情景である。
言葉だけであったらきっと想像するのは難しいだろう。
しかし美しいメロディと言葉が一緒になった時に
まだ見たことのない世界や時代に思いを巡らすことができるのは、目が見えようと見えなかろうと、そこには何の差もないのである。
静謐とも言える「赤とんぼ」の歌唱の向こうに
確かに夕焼けに照らされた小道が見えた。
今年初めて客席にて生徒さんの晴れ姿をガン見された川口先生。
そしてボクはそんな川口先生を斜め後ろからガン見。。
手で膝を叩きながらリズムをとったり、1曲目と2曲目の曲間で大きく手を広げてミュート拍手をしたり、胸の前で小刻み拍手をしたり、リラックスしてみたり。。
キュートさ全開なのであった。
31名の方が様々な思いを抱いて参加された演奏会。
その31名の方の思いと祈りを支え切ったピアニストの方々。
音楽に触れる歓びと、歌うことの歓びが自身から溢れだして
その愛情をたっぷりと生徒にそそぐことのできる川口聖加さんはやっぱりミューズなのである。
来年こそはもうちょっと前方のガン見席に移動したい。
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